新・高血圧ボーイ

30代独身サラリーマンの、心が楽になる生き方

寮長との再会

出向が決まって、1週間ほどたったある日のことです。

いつものように、フレックスのコアタイムぎりぎり、10:00ちょうどに出社したのですが、私の会社のPCを立ち上げると、こんな、ちょっと不可解なメールが入ってきました。

***

お世話になります。総務グループの○○です。

本日、9:00頃「××さん」と言う方からふとしさん宛に電話がありました。
会社の代表番号にかけてきましたので、ふとしさんの内線に繋ぎましたが出られなかったので、伝言を承りました。
「私(××さん)のことをよく知っているから」とも言われました。

連絡先:0467−△△−△△△△
上記の電話が通じる時間帯は、10:00までと18:00以降です。
それ以外は留守番電話になっています。
留守番電話に携帯番号を入れてください。

お伝えしましたので、よろしくお願いします。

***

・・・なんだろう。
怪しいなあ。
最近、確かに会社にも変な電話がよくかかってくるしな。
(マンション買えとか、資産運用とか・・・)
その手の電話かしら?
今までおれにはかかってきたことないんだけど。

総務のお姉さんの
「お伝えしましたので、よろしくお願いします。」
という最後の言葉にも、怪しい電話を受けてしまった、という思いが伝わってきます。

でも、思い当たる節がないわけでもありませんでした。

「私(××さん)のことをよく知っているから」
という、いかにも横柄な言いっぷり。
そして0467−△△−△△△△という、どこかで見覚えのある電話番号・・・。

ひょっとして・・・。
私は定時後、思い切ってこの電話番号に電話してみました。

「やあ、ふとしくん、元気かね。」

聞きなれた、懐かしい声でした。

「やはり寮長でしたか。お久しぶりです。」

電話の主は、私が入社してから3年間住んでいた、独身寮の寮長でした。
その寮長が、「久々に会って飲まんかね。」と、誘いの電話をしてくれたのでした。
・・・会社の代表番号に・・・。

当時、弊社の独身寮は鎌倉市、湘南モノレール沿いにありました。
今ではちょっと考えられない、4畳半一間の部屋。
つくばの学生寮よりも狭い・・・。
当時運送業をしていた兄のトラックで、つくばから鎌倉に引っ越したのですが、その荷物の半分以上を持ち帰ったのを思い出します。

この寮、今思い起こせば、かなり不思議な寮でした。
寮長の方針で、新入社員には門限を課すのですが、その門限がなんと21時・・・。
当時新人研修は渋谷でやっていて、寮の最寄り駅まで1時間半かかる。
なので、19時半には家路に向かわなければならない。
新人研修の、入社して最も飲みたい盛りの時期、この仕打ち。
実際、18時に飲み始めて、19時半に店を出たこともあります。
私の、「持ち前のハイペース」は、ここで身についたのかもしれません・・・。

それ以外のことでも、かなり口うるさい寮長だったのですが、実に面倒見のいいところもあります。
住民票や印鑑証明を寮生の代わりに取りに行ってくれたり、怪我や病気をした寮生を病院に送ったり・・・。
あと、寮の食堂が休みの土曜日に、お茶や自家製のカレー(なぜか豆カレー)を振舞ったりもしてくれました。

部屋で昼まで寝ているところに、電話がかかってきて、

「お茶でものまんかね。」
「カレー食わんかね。」

と言う感じ。

寮長の部屋で、何度も聞いた「戦争の話」を聞きながらお茶を飲む。
たまに「うざい」と思うときもありましたが、基本的にありがたく頂戴していました。

私は、どちらかと言うと門限を破ったり、夜遅くまで食堂で騒いでいた、いわゆる「できの悪い」寮生だったと思うのですが、なぜか寮長には慕われているようで、このお茶やカレーの恩恵をずいぶん受けさせてもらいました。

その鎌倉寮を出てから早9年。
その寮長が久々に飲もう、と誘ってきたのです。
愛媛への出向の件は、当然ながら知る良しもない。
ほんと、偶然です。
もうちょっと遅れていたら、私は既に愛媛に行っていた・・・。
ちょっと運命的なものを感じました。

寮長はさらに
「□□くんと、■■くんも、君と同じ独身だったよねえ。彼らにも声をかけてくれんかね。」

独身を集めるあたり、お得意の
「いつまで独りで居るのかね。」
という説教をしたくてたまらないんだろうな、という思いが伝わってきます。
まあ、この日ぐらいは、その説教を素直に受けてもいいでしょう。

と言うわけで、私以外の同期の元寮生(独身)2人を集めて、寮長と大船で飲むことになりました。

大船駅で、寮長と待ち合わせ。
年齢は、恐らく私の父と同じか、それより上。
であれば恐らく、80歳近い。
(なにせ、戦地を経験してるからなあ)
よぼよぼな老父になっていたら、悲しいなあ、なんて思っていた私がバカでした。

変わってない・・・。
電話の声も変わっていませんでしたが、その風貌も昔のままでした。
どこから来るんだ、この元気さは。

早速、「いきつけ」と言う焼肉店に、我々を案内します。
・・・「牛角」でしたが。
店内で、早速ビールとハラミ6人前を注文。
さらに店員の姉ちゃん捕まえて「高校生?若くていいなあ。」とちょっかいを出す。
彼がなぜ、変わらずに若いのか、その理由を垣間見たような気がしました。

この寮長、実は、今も「寮長」だそうです。
実際、鎌倉の独身寮は今はなくなっているのですが、外人社員向けの宿舎がまだ鎌倉にあり、そこの管理人・・・寮長をやっているようなのです。
たまに英語で、説教もするらしい。いやいや恐れ入ります。

風貌も変わっていませんでしたが、そのしゃべりも昔のまま。
「戦争の話」も昔のままでした。
寮長の若いころの武勇伝、「寮はこうあるべき」という持論、そして「嫁もらえ」という説教・・・。
すべてが懐かしく、心地よく感じられました。

ただ、昔の人、だからでしょうか・・・?
肉をガンガン、注文しまくる。
さっきハラミ6人前食ったばかりなのに、さらに4人前追加。
ホルモン3人前、カルビ3人前、牛タン2人前・・・。
「もう昔ほど、食えませんよ・・・。」
寮の食事で、あっという間に15kg太った・・・。
あのころが蘇ってきます。

焼肉と寮長の話ですっかり満腹。
何もかも変わっていない寮長に、ちょっとタイムスリップをさせてもらった気さえしました。
歳をとっても、これだけ生き生きしていたら、すばらしいな。
おれもこんな爺さんになれたら、と思いました。

実は昨日、この寮長から再び電話がありました。

「愛媛はいつ行くのかね。その前に、会わんかね。いい子がおるんだが・・・。」

・・・。
いったいこのオヤジに、なんでそれだけの人脈があるのか?
不思議にもなります。
私はとりあえず、その時間はなさそうなので、他の二人にスルーパスを渡そうかと思っています。

***今日の血圧(mmHg)162-97***

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ふとし

  • Author:ふとし
  • 30代独身サラリーマン。
    2008年4月より、愛媛から奇跡の復活。
    湘南ボーイと高血圧ボーイの両立を目指す。
    世間で言うこところの独身貴族。
    実際は裸族。

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